2022年7月23日、日光市内にて、映画『日光物語』の地元お披露目上映会が催されました
宝田は出演こそなるも、完成品を観ることは叶わなかった作品です。
クランクアップ後はコンディションが整わず、以降の出演等は全て見送ることとなりました。
銀幕では最期となる宝田明の演技姿に、キャスト、スタッフ、会場のお客様から沢山の惜しむ声を頂戴致しました。
映画『日光物語』|亡き人の幻影に心を寄せながらも、未来に夢を馳せる
妻を亡くして五年、主人公の大場嘉門(=スネオヘアー)は、白昼夢で妻を追う。経営する地元の観光者向けのカフェは繁盛するも、
切り盛りは娘たちに任せ、ぶらぶらとしただらしない日々。
偶然見かけた謎の旅人女性・大滝優子(=武藤十夢 / AKB48)の背中姿に妻の面影を感じたのか、大場の日常は色めいたものに変わっていくー。
雄大で、美しい日光の風景を背景に、温かい、現代風『男はつらいよ』が綴られた。
宝田明が扮する『門跡(もんぜき)』は日光は"二社一寺"で有名な輪王寺の役職名である。(分かりやすく云えば、「一番偉い人」)。
恐れ多い役のオファーは、本作品の五藤利弘監督から。特別協力の高村康一郎氏が繋いだご縁。
俳優・宝田明との撮影を振り返ってー
五藤監督「撮影前に宝田さんが出演して下さることが決まったのがとにかく嬉しかったです。
作品を大いに引き立てて下さるだろうと期待したし、歴史ある寺社と一緒に、
映画の風格が膨らむって予感できました。
撮影は驚きが多かったです。宝田さんからは脚本の段階からアイデアやアドバイスを沢山いただけました。
現場では面白いアドリブをして下さり、楽しい撮影になりました。
大スターなのに、僕なんか小さい映画畑の人間も隔てなく相手にして下さる人柄には一番驚きました。
映画には真摯真剣で、脚本について僕に何度も質問し、脚本を大切にして下さりました。
優しく素敵な方なんだなって感激すると同時に、お芝居に真正面から立ち向かっていく姿勢を見ながら、
こういう人だからスターになったんだなって納得しました。
『男はつらいよ』みたいのを目指していたので、御前様みたいな役どころとして宝田さんが一番ふさわしいと思った。
笠智衆さんのような威厳と風格を持ち合わせていた。やってみて、まさにその通りで、優しさと存在感がありました」
武藤「宝田さんは最初厳格な方と思っていたのだけど、実際に共演してみると全然違くて、話しかけてくれたのが驚きました。
思っていたよりも全然優しくて、アドリブとかも多くて、それはダイジョブ!?って思うようなチャレンジも沢山していて、
ハラハラしちゃいました(笑)。こういう素晴らしい俳優さんと作品に出られたのはとにかく大きな経験でした」
五藤監督「武藤さんとは『おかあさんの被爆ピアノ(2020)』で一緒させていただいたんです。
魅力的な人で、本作の謎の女性にはぴったりだって」
武藤「呼んでもらえて素直に嬉しかったです。前回は広島で原爆、今回は日光。
どちらも地域に寄り添った内容をフィーチャーしていたので、
人の繋がりとか温かさを感じられる撮影に加えられて楽しかったし、良かったです。
宝田さんの人情味溢れる姿を間近で見られたことも、地元愛溢れる作品企画に携われたことも
私の芸能生活において大変意味があるとも感じました。
AKB48で活動する他、気象予報士とかやらせてもらえたりしていますが、
演技の勉強をさせてもらったのは今後の糧になります。ありがたいしかなかったです」
"人と人が繋がっていく"そんな温かい現象をこの日光から世界に向けて発信したい
五藤監督「そうですね。宝田さん、武藤さんもですが、今回、日光の方達がとにかく温かくて感謝しています。
輪王寺(りんのうじ)や神橋(しんきょう)等、普段絶対撮影出来ないような場所で撮影が出来ました。
宝田さんの衣装も実は、本物の門跡からお借りした本物袈裟なんです。どうしてってくらい良い環境、
すごく感謝しています。冬の日光の良さを見せてあげたくて、撮影では苦労を皆様にかけました」
武藤「"ここはヒーター使えない場所なんで"とかありましたね」
五藤監督「屋外の寒い場所で撮影が多かったから、暖房も使えなかったね」
武藤「朝の撮影とか日が差しているのに水たまりは凍っていたりとか(笑)ひえーって」
五藤監督「宝田さんも撮影の時にはスッと演技になっていたり、俳優さん達はみな、
寒さが表現で漏れないようにってとても気を遣ってくれていました」
武藤「寒さとか、やっぱり時間がタイトだったので、限られた中でやるのは大変でしたが、
それ以上に日光の人たちが温かったです。見てくれる方達には、
私達キャストとか制作人とかの想いと日光の人たちの想いがこもった魅力あふれる作品として、
感じ取っていただけたら嬉しいですね」
五藤監督「映画を通して、誰かと繋がっていく様子は代えがたいものがあります。世界の日光ですから、
作品を通して地元の人が気が付かなかったような新しい日光の価値が伝えられたらと思います」
監督、世界いきましょ、世界に。